就実大学・就実短期大学

表現文化学科

公開講座実施報告

後期第6回 平成29年11月25日(土)

「高齢者における薬の体内動態

柴田 隆司(薬学部 薬学科 教授)

2017年度最終回の就実公開講座として、薬学部の柴田隆司教授が、「高齢者における薬の体内動態」というテーマで講演された。

高齢になると体の構成比率や機能が代わってくるので、若い頃効いていた薬が効かなくなったり、効き過ぎたりすることがある。これは薬の吸収、分布、代謝、排泄に関与するアルブミンやα1-酸性タンパク質といったタンパクの血中濃度が増えたり不足したりすること、肝機能や腎機能の低下、生体の恒常性維持能の低下、薬物吸収能の低下など、幾つかの因子が関与している。

クスリは反対に読めばリスク。薬の有効性と安全性、薬効と副作用はシーソーの関係にある(トレードオフ)。このため、高齢者になるとそれまで以上に正しい用法、分量の服薬に気を付けなければならない。薬の分量は大人と子供の別しか書いていないことが多いが、体重の軽い女性には過大な内服量になってしまうことがあるので、高齢者になるとインターネットでその薬のことを調べたり、掛かりつけの医師などの意見を聞くことが大事だ。

約70名の受講者の中には高齢の方も多く、熱心に受講されていた。

 

 

 

 

 

後期第4回 平成29年11月11日(土)

「生薬を食事に取り入れる

佐々木 寛朗(薬学部 薬学科 講師)

今回は東洋医学に基づいて自分の体質を知り、生薬を食事に取り入れることで、“未病”を改善する方法についてご講演いただきました。

健康と病気の間には、未病と呼ばれる状態があります。この未病に対して、西洋医学よりも東洋医学による治療が向いており、生薬を食事に取り込むことによって未病の改善を期待することができます。未病は主に気・血・水という3つの要素のバランスが崩れますが、そのバランスが崩れた状態を気虚・気滞・血虚・瘀血・水毒などに分類し、わかりやすく解説いただきました。あわせて、人参・大棗・山薬・生姜などの生薬の特徴や取り入れ方についてもお話いただきました。

最後に、食事のバランスを保って健康に過ごしていきましょうと結ばれると、熱心に聴かれていた受講生の皆様から大きな拍手がおこりました。

 

 

 


後期第3回 平成29年10月28日(土)

「良い睡眠をとるには?

坪井 誠二(薬学部 薬学科 教授)

今回は、健康を維持するために必要な睡眠について、睡眠の仕組みと快眠を導く食べ物についてご講義いただきました。

日中太陽の光に当たると脳内物質のセロトニンが増え、太陽が沈むとセロトニンから睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が始まります。そのため、メラトニンが正常に分泌されないと眠れなくなってしまいます。特に近年は、寝る直前までスマートフォンやパソコンを使用し、強い光を浴びることでメラトニンが分泌されにくくなり、眠れなくなってしまっている人が多くいるようです。そのため、快眠には規則正しい生活リズムが必須であることを丁寧に解説していただきました。

また、快眠に効果的な食べ物も教えていただきました。牛乳をはじめとした乳製品に含まれているトリプトファンはメラトニンの素になります。また、ヨーグルトの白い部分である発酵乳ホエーの効果についても、最新のデータとともに解説していただきました。雨の中だったにもかかわらず、多くの方にお越しいただき、皆さん真剣に講義に耳を傾けていらっしゃいました。

 


 

 

 

後期第2回 平成29年10月14日(土)

「AGEs(エイジ)を知って、アンチエイジング

森 秀治(薬学部 薬学科 教授)

AGEsAdvanced Glycation Endproducts(和名:終末糖化産物)の略語で、タンパク質の糖化反応によって作られる「老化や生活習慣病を加速する危険因子」を意味しています。老化の二大要因になるのが「糖化」と「酸化」で、今回の講義では、AGEsが蓄積される要因やその悪影響、糖化を避ける食事法について説明されました。

AGEsが体内で溜まる経路には、飲食物に含まれるAGEsを摂取する場合と、体内で余分な糖がタンパク質と反応してAGEsが作られる場合の二つがあり、これにより、コラーゲン繊維へのダメージや、動脈硬化、糖尿病合併症、骨粗しょう症、白内障など様々な老化の症状が引き起こされます。こんがり焼けたトースト、フルクトース(果糖)の入った缶ジュースなど、私たちは日々、糖化産物を摂取していることになりますが、どのようにしたらAGEsを増やさないようにすることができるでしょうか。

糖化を避ける食事法としては、20分以上かけて食事すること、食物繊維が豊富な食品を早めに摂取し、血糖値を上げやすい食品はできるだけ後で食べること(野菜→タンパク質→炭水化物)、低GI値食品(海藻類、鶏卵、乳製品、きのこ、魚介類)を組み入れること、同じ食材でも調理法によってAGEs量に大きな違いが生まれるため、「ゆでる・煮る・蒸す」工夫をして、食材の加熱は水で行うことなどが紹介されました。アンチエイジングに役立つ具体的なアドバイスが数多くなされ、受講者の皆さんが熱心に聴き入っておられました。


 

 

 

 

後期第1回 平成29年9月30日(土)

「健やかに過ごすための感染対策

塩田 澄子(薬学部 薬学科 教授)

2017年度後期の公開講座が、薬学科教員により「未病」をテーマとして始められた。

初回は塩田教授により「健やかに過ごすための感染対策」の観点から、感染の仕組み、抗生物質(抗菌薬)、ワクチン、これから迎えるインフルエンザ感染への対策を解説された。

最近、話題となった「食品に由来したO157感染」では対策として衛生的処理・加熱・冷却が重要であること、「マダニ媒介による重傷熱性血小板減少症STFS」では素人療法でなく医療機関を受診すること、などが示された。これらの例から、感染症成立の3要素について理解を深めた。菌の有用性などを紹介されたのち、戦争時における負傷から死亡に至っていた状況が抗生物質を汎用する契機となったことを示しつつ、ペニシリンやストレプトマイシンなどの使用により結核や肺炎などが治療され、死亡原因の変化に大きな影響を与えたことが示された。しかし、不適切な使用により耐性菌を誘導してしまったことも紹介され、薬が指示通り飲み切ることの重要性を示された。インフルエンザウイルスを例に、ヒト、トリ、それぞれのウイルスの相違を示され、ブタでは両者の相違を飲み込んでしまうため感染拡大の仲介役となっていることが示された。また、生活面では咳エチケットの重要性、手洗い、マスクの励行などの有用性を示された。「ノロウイルス患者への対応」では患者の吐しゃ物や下痢便への消毒が重要であること、脱水状態への補水の点では給水の良い水の作り方を示され将来の対策として提案された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前期第6回 平成29年7月8日(土)

「発達障害とはどんな障害?

岡田 信吾(教育学部 教育心理学科 教授)

「障害」とは、身体の問題により、「活動に参加するために」変更・調整が必要な状態にあることと捉えられ、「発達障害」も同様に、「活動に参加するために」支援を受けなければ、困難な状況にあることであり、所属するコミュニティへの参加が維持されること、「参加の場」が保障されることが支援を考える上で大切だということについて説明されました。

「発達障害」には、「学習障害(LD)」、「自閉スペクトラム(ASD)」、「注意欠如多動性障害(ADHD)」が含まれますが、これらの障害の特徴的な傾向があっても、本人・周囲が日常生活・社会生活において困難を感じていない・孤立していない場合には、診断名の必要はない、という説明が印象残りました。また、それらの障害がどのような要因により生じ、本人はどのような困難を感じているのかの一端を、映像や具体例により、体感することが出来ました。また、それらの障害により困難を感じている場合への対応について、具体的・日常的な事例が挙げられ、首肯しながら聴講される方も多く見受けられました。

「発達障害」支援には、時に軋轢が伴う場合がありますが、家族・友人など、身近で大切な人が困難な状況にある時、コミュニティから切り離すことなく、個々の状況に応じた配慮・支援をすることは自然なことです。そのような「Inclusion(インクルージョン)」による教育、支援の必要性について、わかりやすい事例とともに提案される有意義な内容でした。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

前期第5回 平成29年7月1日(土)

「カラダと脳に効く運動~歩く?走る?~」

森村 和浩(教育学部 教育心理学科 講師)

今回は、「カラダと脳に効く運動-歩く?走る?どっち?-」というテーマの講義でした。最初に、身体と脳(心)は繋がっており、特に人間(ヒト)の脳は足を司る部分が大きく発達していること、また、人間(ヒト)の身体が、バネの役割をするアキレス腱に象徴されるように、進化の過程で「長く走る」ようデザインされ、走ることで脳が鍛えられてきたことなどが説明されました。そして、そうやって進化してきた人間(ヒト)の身体と脳に効く運動として、スロージョギング®(足の指の付け根で設置し、疲れない程度のにこにこペースで走る)を紹介されました。実際に、教室でスロージョギングを体験してみたり、簡単に行える手遊び運動を行ってみたりと、楽しみながら、「これなら出来る!」というヒント盛りだくさんの講義でした。先生が示されるデータに驚いたり頷いたり、次々に質問の手が挙がり時間が足りなくなるなど、皆さん大変熱心に受講されており、関心の高さが窺えました。

 

 

 

 

前期第4回 平成29年6月24日(土)

「微生物が感染すると、どうして病気になるの?」

森 宏樹(教育学部 教育心理学科 教授)

今回のテーマは、「微生物に感染すると、どうして病気になるの?」で、どんな微生物が、どのような経路で私たちの身体に入り込み、感染症を発生させるのか、また予防のために心がけるべきことなどに関するご講義でした。空気中や手のひらに当たり前に存在している目に見えない微生物ですが、培養して育て「見える化」してみると、色々な菌が・・・。紹介された映像から、私たちが日々、いかにたくさんの微生物に囲まれて生活しているのか実感させられました。感染症を引き起こす微生物には、真菌、原虫、細菌、ウイルスがあり、それらがヒトに感染する経路には、経口感染、経気道感染、経皮感染、粘膜感染といった種類があること、そして、感染予防のためには、感染源・感染経路・感受性宿主対策の三つが大切であることが、大変わかりやすく説明されました。最近話題となったトイレットペーパーの三角折りや、先生が実際に体験されたアメリカの感染源への対応のエピソードなども大変興味深く、みなさんメモをとりながら熱心に聴いておられました。


 

 

 

 

前期第3回 平成29年6月17日(土)

「話を『理解する』」

堤 幸一(教育学部 教育心理学科 教授)

「私はうなぎです。」と言われたとしたら、何のことがわかるでしょうか。しかし、文脈を推理して「今日のお昼に何を食べたい?」となると話がわかります。この時の脳内では、まず『○○の話かな?・・・』と文脈を推理し、意味を解析して表面上の理解をする仕組みが働き、『○○って言うけど、(推論したら)たぶん◎◎の話だな』と文脈生成の枠組み(=状況モデル)を作り、初めて「わかった」状態になるそうです。ひとつめに、話を理解するうえで、状況モデルは、重要な意味をもっていることを解説されました。

次に、状況モデルの有無による理解のしやすさについて、「なにこれ?」体験をしました。お話しを聞いて内容を記録するのですが、音声だけ聞いた時と、状況を示す絵を見て状況をイメージしてお話しを聞くのでは雲泥の差でした。つまり、経験を増やして状況推理を洗練・抱負化することが重要なのです。わかることで、記憶もしっかり保持・再現できることが示されました。

話を理解することは日常的な行動ですが、その仕組みを興味深く学んだ時間でした。



 

 

前期第2回 平成29年6月10日(土)

「実践で学ぶちょっと先の認知症予防」

桑原 和美(教育学部 教育心理学科 教授)

6月10日の講座「実践で学ぶ ちょっと先の認知症予防」を、22名の皆さんと体育館多目的ホールで行いました。30分の講義の後は、ジャンケン遊び(両手ジャンケン)とストレッチを個人で行い、リズム足踏みをグループで楽しみました。1人でも行うことができる内容でしたが、グループですることでほどよい緊張感が生まれ、ほおの筋肉も緩んできました。お腹もほどよく空き、解散。「コミュニケーション不足」や「運動不足」は認知症になりやすい要因です。こんな生活を続けることが、認知症予防の一歩であることを、実践で学んだひとときでした。


 

 

 

前期第1回 平成29年6月3日(土)

「もし災害がおこったら…心と身体はどうなるの?」

石原 みちる(教育学部 教育心理学科 教授)

2017年度就実公開講座の前期シリーズが開講した。

本年度は新しくなったB館の106大講義室がメイン会場となり、ゆったりとした会場スペースで聴講できるようになった。

前期は教育学部・教育心理学科が担当し、第1回は石原みちる教授による「もし災害がおこったら・・・心と身体はどうなるの?」のテーマで、自然災害に対する市民の心と身体の変化について解説された。

 

人間が制御できない自然災害、特に地震は最近の記憶に新しいが、被災した市民が乗り越える過程は、生命にかかわる恐怖体験、喪失感、避難による日常生活の変化であろう。それらは、トラウマ反応、喪失体験、二次的ストレスをもたらす。これらは誰にでも起こり得る自然な反応であり、回復のために必要なことは、災害時の「心のケア」、安心安全の保障、他者からのサポート、ストレス反応への対処法を知り積極的に実践することである。仮設住宅へ避難、リラグゼーションの実践、トラウマ経験の昇華が望まれる。阪神淡路大震災では住民がバラバラで仮設住宅に避難し孤独死を誘発した反省から、東日本大震災では、地域の絆を破壊しないように仮設住宅への避難は地区単位で行われた。日頃から、減災のために、耐震化や家具の固定、地域コミュニティーの形成、援助資源の知識を深めることが重要であることが指摘された。