2年生からスタートするゼミナールは、本学科の特徴である、少人数教育を象徴しています。 ここでは各ゼミナールの活動について、順次ご紹介していきます。
日本文学コース
松尾直昭ゼミ
松尾ゼミ授業風景(表現文化ゼミナールⅤ)-近現代文学
24年度のこのゼミは、13名の4年生が明治時代の作家から現代作家までの作品を研究しています。高校在学時から吉本ばななの作品に憧れ、大学で勉強したいと思って入学した学生やら、入学後に谷崎潤一郎との出会いがあった学生など、文学体験は様々です。
教師の役目は、学生の皆さんが、作品から受けた衝撃を自分の感性を反映させた固有な表現に再構成させる作業の手助けです。しかも、論理的な文章で構成する大切さも理解してもらわねばなりません。わずかな刺激に反応できる柔らかな感性と、自分の感動に冷静な距離を持つ強さと、微妙なニュアンスを捉えられる表現力が必要です。こうした必要性の修得が、社会に出たときの一人一人の自信につながるように、毎回の授業に臨んでいます。
今年度の卒業研究題目の例
太宰治『斜陽』の作品分析 ― 聖書との関わり
宮澤賢治『銀河鉄道の夜』研究 ― あるいは成長の物語
江國香織『きらきらひかる』 ― 信頼の条件
吉本ばな『TUGUMI』 ― 行動する少女
谷崎潤一郎「刺青』― 自然主義への反抗
井上啓治ゼミ
各ゼミナールでは、学科教育行事である「卒業研究中間発表」を7月~9月にかけて開いていますが、中でも井上ゼミの中間発表は次のような点で特徴的な会になっています。
・本格的な学会形式を踏んでいます。
・下級生(一・二年)やOGを中心に沢山の聴衆に来てもらい、その前で4年生は一人一人発表し、3年生は裏方を全て行います。
この二点により、ゼミ活動の中心として、特にゼミの教育イベントの核心として、ゼミ生に良い刺激を与えています。
4年生各々10分発表・質疑応答5分、3年生の代表も10分の発表をしました。2年ゼミ有志もスタッフとして参加し、本物の学会のような臨場感と緊張感の中で、楽しく行うことができました。発表者と裏方で働いてくれた下級生の、満足感と達成感にあふれた顔がとても素敵でした。
卒論をいくつか紹介します。
八犬伝、犬川荘介の研究
八犬伝、犬飼現八の研究
北斎「富嶽三十六景」の研究
広重ジャポニスムの研究
伊藤若冲の研究
美人画の研究
狩野派の研究
「東海道四谷怪談」の研究
「雨月物語、浅茅が宿」の研究
与謝蕪村の研究、等々
川崎剛志ゼミ
川崎ゼミは、日本文学コースのうち中世文学を中心に学ぶ場です。一語一語、なまのテキストを自力で読み解くこと、またそれぞれのことばの背後にある社会状況や宗教観等に深く分け入ってゆくことを大切にしています。
そのために、とにかく図書館にこもり、他方であちこちに出歩きます。出歩くほうの中心となるのが、世界遺産、熊野へのゼミ旅行です。主に電車、バスを利用しますが、おおよそ平安時代から鎌倉時代にかけて盛んだった熊野御幸の紀伊路にそって進んでゆきます。今年は、発心門王子から本宮大社まで約8キロを3時間かけて歩きました。観光ポスターによく出る、那智大社に向かう苔むした大門坂も歩きました。昨年は世界遺産登録を機に観光客が押し寄せ、苔が危機に瀕しているとも報道されましたが、一年たつと、つるつるとよく滑る石畳に回復していました。
岡部由文ゼミ
『源氏物語』に代表される平安朝を中心とする古代文学をフィールドにして、背後にある時代状況や人間関係といった要素を踏まえながら、人のこころの様態とその表現様式を学ぶのが岡部ゼミです。
ゼミでは、精読と分析によって、問題点と課題の発見方法の修得を目指す作品輪読を3年次に実施します。現在は『和泉式部日記』に取り組んでいます。4年次になると、3年ゼミでの成果である一人ひとりの学生が発見した課題を発展させて、それぞれが主体的な取り組みをもって追究し、卒業論文に結実させます。
以下に、岡部ゼミの学生たちがどのような課題設定をして研究に取り組んでいるのか、2010年度から2012年度までの3年間に提出された卒業論文の中から幾つかの題目を示しておきます。
宇津保物語の研究―仲忠の栄華達成と家族観―(2012)
伊勢物語の研究―女の色好みと男の色好み―(2011)
源氏物語の研究―第一部における紫の上の魅力―(2012)
源氏物語の研究―紫の上の苦悩―(2010)
源氏物語の研究―六条御息所の生霊化―(2011)
源氏物語の研究―光源氏の出家願望―(2010)
大鏡の研究―花山院の出家をめぐる歴史叙述の姿勢―(2012)
更級日記の夢と信仰―その変化と本質―(2012)
蜻蛉日記の研究―兼家の実像と虚像―(2010)
和泉式部日記の研究―和歌表現と人物像―(2011)
日本語学コース
中﨑崇ゼミ
日本語学コースのゼミである中﨑ゼミは、我々が日々当たり前のように使用している現代日本語を研究対象として、ことばの意味や機能、決まり(ルール)を明らかにすることを目的としています。無意識に使用している日本語ですが、「なぜそのことばを使うのか」「なぜそのことばは使えないのか」「そのことばとこのことばはどこが違うのか」といった問いを投げかけられると正確に答えられないことがほとんどです。このような問いに答えるためには、自分のことばを内省するだけでなく、実際に使用された日本語を使って言語事実を観察し、その言語事実から仮説を考え、その仮説を別の資料を使って検証することが必要です。中﨑ゼミでは、このような地道な作業を繰り返し、2年間かけてある一つの日本語に関する問いの答えを見つけていってもらいます。
卒業論文完成までの具体的なスケジュールは次の通りです。
3年前期:卒業論文のテーマ決定・テーマに関連する先行研究の調査
3年後期:先行研究のまとめと問題点の分析・データの採集と調査結果の発表
4年前期:調査結果と考察の発表(各学生2回以上)
4年後期:調査結果と考察の発表(各学生2回以上)・卒業論文提出
岩田美穂ゼミ
岩田ゼミでは、言葉の多様性の観点から日本語を深く追求していくことを目的としています。日本語と言われる言葉が「全て」同じ言語だと思っている人は多いでしょう。しかし、古典語と現代語は同じ日本語ですが、大きく異なります。現代語の中でも、例えば男性と女性の使う言葉は全て同じと言えるでしょうか?東京の人が使う言葉と大阪の人が使う言葉と岡山の人が使う言葉は同じでしょうか?言葉は、使われる時代や人、場面、地域などによって、様々なヴァリエーションが存在するのです。それらのヴァリエーションには、どのような違いがあるのか。そして、なぜ違うのか。ゼミでは、自分たちの身の回りにある様々な言葉の中から課題を見つけ、言語資料の調査を通して、上記のような問いに対する答えを探していきます。
我々の日常には、言葉が溢れています。そのような膨大な言葉の集積を研究対象とする日本語学は、単純な単語を一つ調べるだけでも非常に時間がかかります。そのため、本ゼミでは3年次から卒業論文のテーマを決め、調査を開始し、2年をかけて論文としてまとめていきます。
表現創造コース
岡本悦子ゼミ
岡本ゼミは、全国でも珍しい身体表現ゼミです。身体表現の領域は舞踊・演劇・朗読や音楽を絡めた舞台など実に幅広く存在します。これらについて書物を通して外側から学ぶより、自ら体験することを通して内側から表現を見つめ直すことに重点を置いています。
表現体と意識しようと、するまいと、私たちは身体を生きています。この際、経験の有無を問わず、既に確立した芸術として整理整頓された分野に固執せずに、自分の身体(声帯も含め)をフルに生かした自分の身体表現を一緒に探してみませんか?
昨年10月に開催した初めての卒業制作発表会ではコンテンポラリー系ダンスあり、コントあり、演劇ありの賑やかな演目が並びました。ゼミでは身体をベースに学びますが、音響や照明効果といった演出面への学習、そしてチラシ作りなども活動に含みます。岡本ゼミの4年次は10月の発表と12月にはその発表に基づいた創作ノートの提出と大忙しですが、皆充実感一杯でやり遂げることができました。
意欲的なおもしろ人間大集合!お待ちしています。
小林敦子ゼミ
小林ゼミは、実作を通して、言葉の表現とは何かを考えます。「私」を書くとはどういうことでしょうか? 「私」から見た世界と、「あなた」から見た世界はどのような言葉の差がでるでしょうか? 目の前に置かれた林檎を、絵画のように、言葉によって描写することができるでしょうか? 学校を見渡す屋上に立った時、感じられる光景は、言葉でどう掴むことが可能でしょうか? このゼミでは、小説や詩といった作品の制作に入るにあたって、しっかりと自分の経験と感覚を注視し、自分なりの言葉を芽生えさせていきます。その上で、古今の様々な文学理論を学び、自分の立てた主題に沿って文学の古典を調査し、思考を深めてもらいます。「恋愛」が主題なら、過去の優れた書き手はどのように「恋愛」と向き合っているでしょうか? 自分の感覚に徹底して素直になるとともに、自分の選んだ主題の豊かな知識を得て、充実した卒業制作を目指します。