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総合歴史学科 優秀卒業論文発表会

【2017年度】

 

2018年1月27日(土)午前11時から、本学S101教室で、総合歴史学科恒例の「優秀卒業研究発表会」が開催され、学科生40名ほどと学科教員8名が参集しました。研究指導をおこなう教員たちから推薦された4年生の代表者5名が、各自の卒業研究の内容を15分の制限時間で発表して学問的意義を説明、プレゼンの模範を示し、後輩たちへ良き刺激を与えてくれました。

 

今年度の発表者研究題目は、発表順に以下のとおりです(かっこ内は、所属ゼミナール)。

 

有川 祥紀(福田ゼミ) 「異端審問の虚像と実像についての一考察」
小林 豊(井上ゼミ)

「現代インドの社会変容と女性への暴力

―インド北西部における現状からの一考察―」

田坂 浩士(渡邉ゼミ) 「漢代における対羌政策 ―懸泉置漢簡からみた辺境防衛―」
津下 晏奈(福田ゼミ) 「中世ヨーロッパ音楽の歴史」
長瀬 優(福田ゼミ) 「ヨーロッパにおける動物の象徴性」

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有川発表は、異端審問において、残虐な拷問や厳しい刑罰が無慈悲に執行されていたというイメージは後世の文学作品などによる虚像であり、実際の異端審問では規範に則って厳格に手続きをし、慎重に審理が進められたことを解説し、誤った虚像を正すべきであると強調しています。



小林発表は、「名誉殺人」に象徴される女性への暴力について、とくにインド北西部の事例を考察したものです。女性への暴力の問題は伝統的・後進的な社会の問題であり、近代化とともに解決されていくという通説的な解釈は適切でなく、経済の発展などによる社会の急速な変化、既存の有力カーストや農村部の地位の低下などに危機感を持った人々が共同体の連帯を崩す若者に対して「名誉殺人」をし、女性への抑圧を強めるのではないか、という重要な指摘がなされました。



田坂発表は、漢王朝に大きな影響を与えた羌(甘粛・青海省一帯に居住した周辺民族)に注目して、漢代の異民族支配や辺境防衛の実態を解明しようとしたものです。近年の出土資料である「懸泉置漢簡」の解読をつうじて、漢代の辺境防衛は民政と軍事の両面で成り立っていたが、とくに護羌校尉を長官とする組織が担った平時の民政面での政策が重視され、対羌政策の基本方針となっていたことを明らかにしています。

 


津下発表は、中世カトリック教会の代表的な聖歌であるグレゴリオ聖歌について考察し、東方教会の聖歌との対比などをつうじて、その特徴を明らかにしたうえで、キリスト教と音楽には密接なかかわりがあり、教会音楽の整備とともに西ヨーロッパ世界で音楽が普及・発展していったと結論付けています。

 


長瀬発表は、紋章などに登場する動物のシンボリズム(象徴性)に注目したもので、ヨーロッパでは熊が動物界の王であったが、異教的な熊を嫌った教会がライオンに肩入れし、12世紀から熊の権威が失墜、ライオンが百獣の王となったこと、ドラゴンが聖人と対決する邪悪な存在とされたことなど、興味深い具体例によって動物の象徴性の利用について解説しています。


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いずれも優れた学びの成果ですが、アジア史の発表をした2名は4月から関東地方の大学院へ進学することになっており、発表内容も水準の高いものでした。今後の学問的成長を期待しております。

 

(文責 福田)

 



 

【2016年度】

2017年1月28日(土)13:00より、S101教室にて、総合歴史学科優秀卒業論文発表会が開催されました。発表者とタイトルは、以下の通りです。

 

 

植木美香子「キリスト教とローマ皇帝」(福田誠ゼミ)

大山礼子「戦後日本における在宅介護労働者の歴史」(井上あえかゼミ)

金平朋子「政教分離社会アメリカにおける宗教」(福田誠ゼミ)

喜多一樹「『文保の和談』の政治的背景について」(苅米一志ゼミ)

山下 遥「『女帝のロシア』について」(福田誠ゼミ)

 

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植木発表は、キリスト教迫害の悪名高いローマ皇帝について、その悪名そのものが、後世の元老院の構成員による意図的な構築ではないかと指摘するものでした。

植木美香子さん

 


大山発表は、戦後日本の在宅介護労働者の歴史を、1950年代から丹念に跡づけたもので、在宅介護が一方的に女性に押しつけられてきた現実を喝破するものでした。

大山礼子さん

 


金平発表は、政教分離社会と言われるアメリカにおいて、実は宗教の政治介入そのものは閉ざされておらず、「ゆるやかなキリスト教による統合」「キリスト教によって未来の理想を語ること」が精神的支柱となっていることを指摘しました。

金平朋子さん

 


喜多発表は、南北朝の到来を誘引した両統迭立期における、大覚寺統と持明院統との政治交渉を緻密に追うもので、今後の研究の基礎資料を提供しました。

喜多一樹さん

 


山下発表は、女帝の在位期間が60年以上にわたった18世紀のロシア史を述べたもので、ヨーロッパとは異質であったロシアの性格が浮き彫りにされました。

山下 遥さん

 

 

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三つのゼミからバランス良く発表者が立ち、また参加者も50名にのぼるなど、豊かでかつ有意義な時間であったと思います。今後は、1~3年次生がこうした舞台に立ってくれることを、教員一同は期待しています。

 

(文責 苅米)


【2014年度】

 

 

 

 


【2013年度】

 

2014年1月25日(土)13時より、本学E402教室において、総合歴史学科の優秀卒業論文発表会が行なわれました。教員から推薦された4年生が、卒業論文の内容を、制限時間20分で発表するものです。発表者と論文題目は、以下の通りです(括弧内は所属ゼミナール)。

 

 

岡本郁美さん (曾根ゼミ) 「石山寺について ―本尊を中心に」
河野加奈さん (曾根ゼミ) 「広島県山間部の神楽について」
野田和心さん (苅米ゼミ) 「紡績業における女子従業員の生活実態―深夜業禁止後の福利厚生を中心に」
二嶋美帆さん (櫻田ゼミ) 「岡倉天心著『茶の本』が欧米に与えた影響について」

 

 

岡本論文は、石山寺の本尊について、造立から現在に至る変遷を扱った内容です。本尊の観音像が、火災などに遭いながら何度も修復され、宝物が胎内に繰り返し奉納されたことを指摘しています。

 

河野論文は、広島県山間部の神楽が、どこからどのように伝播したのかを検討したものです。多くの資料を扱い、従来の研究による伝播経路に対して訂正を行なっています。

 

野田論文は、工場法改正後に紡績業各社がいかに従業員の福利厚生に取り組んだかを扱ったものです。紡績女工は決して悲惨な存在ではなく、彼女ら自身によって、女工生活はむしろ幸福であったと意識されたことが指摘されました。

 

二嶋論文は、岡倉天心『茶の本』が日本文化にこだわり続けた天心の苦心の作であり、同書が欧米からする日本文化の見方に大きな影響を与えたことを指摘しています。

 

岡本 郁美 さん 河野 加奈さん
野田 和心 さん 二嶋 美帆 さん

 

いずれも優れた内容をもつ論文ですが、はっきりとして落ち着いた語り口という点では、二嶋さんの発表がぬきんでており、こちらが最優秀となりました。以下、二位が岡本さん、三位が野田さん、四位が河野さんとなっています。総合歴史学科では、今後も1~3年次生への刺激の場として、この発表会を続けていく所存です。

 

(文責:苅米)