山陽新聞社・論説副主幹の岡山一郎氏による特別講義
ヨーロッパ・アメリカ史入門2の授業では、毎年、西洋史関係の名著リストのなかから1冊選んで読み、その1節を導入にして今日の問題と関連づけた新聞第1面コラムを書くという課題に取り組んでいます。新聞第1面コラムの書き方のコツを教えていただくために、今年度も山陽新聞社の論説委員会からゲスト講師をお招きしました。今回は岡山一郎論説副主幹がお忙しい合間をぬってお越しくださり、特別講義を担当してくださいました。
まず80名ほどの履修者(大多数は1年生)に対し、岡山副主幹が家で新聞をとっている人はと尋ねられると、明らかに過半数の学生の手が挙がりました。次いで、ほんの少しでも自分も読んでいるという人はと問うと、それでもかなりの数の挙手があり、岡山さんも「意外と多いですねぇ」と驚いておられました。講義後、岡山さんは、新聞を読んでいる学生が比較的多いのは、自宅から通っている人が多いためではないかと推測されていましたが、小・中・高校と先生方が熱心に新聞活用教育に努めてこられた成果という面もありそうです。
肝心のコラムの書き方については、岡山副主幹は、主にご自身の手になる複数の「滴一滴」の実作を例にとって、実践的な指導をしてくださいました。起承転結で構成すること、5W1Hをつねに念頭におくこと、短文にして主語と述語の距離をあけないこと、そしていちばん大切なのはメッセージ、つまり何を伝えるかだという点を特に強調されました。
楽屋裏の苦労話として印象に残ったのは、情報を得るためにはインターネットではなく、どうしても本を読まねばならないが、原稿を書く必要のある日が月曜日だと公共図書館が閉まっていてとても困るということでした。最近、漫画家の水木しげるさんが亡くなられたときは、夜遅くまで開いている本屋まで足を運びやっと水木さんの本を探し当て、翌日朝刊の入稿締切までに何とか原稿を仕上げることができたとのこと。そのコラムの書き出しは次のようなものでした。
滴一滴 「私は半分あの世にいる」。漫画家の水木しげるさんが自著「水木サンの幸福論」に書いている。物心ついてから、妖怪や幽霊、精霊たちと付き合い、冥界とこの世のすき間に、片足を突っ込むようにして生きてきたからだという▼「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画を描き続け、NHKの連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」にも取り上げられた水木さんが、きのう93歳で亡くなった。(以下略)」 【山陽新聞2015年12月1日】
特別講義を受けた履修者の感想は、若干の例のみ挙げると下記のようなものでした。コラム課題に対する負担感や苦手意識が幾分か軽減されたようです。
- 私の家庭は、3社の新聞をとっており、その中に山陽新聞もある。コラムをよく読むが、私は山陽新聞の「滴一滴」がいちばんすんなり読め、おもしろいと思う。その「滴一滴」に関わっている先生の話が聞け、どういう方法で資料を集めているかなど知れたことが嬉しかった。
- 先日、本を読んで「さぁ、書くぞ」と意気込んでみたものの、まったく筆が進まなかった。だから、今回の講義で導入のパターンや起承転結のテクニックを知ったことで、書き進める糸口が見えた気がする。
- 授業の初めで、新聞をとったり読んだりしている人の数を見たとき、けっこう多くてびっくりしました。冬休みに実家に帰るので、帰ったら読もうと思いました。また「~だが、」という言葉はあまり使わないほうがいいというお話のときに、自分は今まで頻繁に使っていたことを思い出し、気をつけなければと思いました。
(櫻田 記)